婚姻費用の支払いを確保する方法
2025/09/05
調停で婚姻費用が決まった後、夫が支払いを怠った場合、妻はどのようにして婚姻費用の支払いを確保できるでしょうか。この場合、調停で決まった婚姻費用については、裁判所に「強制執行」の申立てをして、夫の財産や給料を差し押さえることができます。さらに、調停中の妻の生活が逼迫している場合で、急いで払ってもらう必要があるときは、「審判前の保全処分」という制度を利用して、調停委員会が決定する前に支払ってもらうことができます。ただし、この制度は「仮処分」という手続きで夫の財産を差し押さえることができる反面、その後に支払いが滞った場合、改めて「強制執行の申立て」をして「履行勧告」という文書を送付して支払いを促すことが必要です。あまり効果は期待できません。
婚姻費用が発生するタイミング
2025/09/05
婚姻費用を請求できるとして、いつからの分を計算するのでしょうか。たとえば、専業主婦の妻が夫と別居している場合、妻の側は早くから婚姻費用を請求したいと考えていることが多いでしょう。しかし、裁判所の実務では、調停を申立てた時から計算するのが一般的です。それ以前から別居していたとしても同じです。つまり、夫婦間で婚姻費用の合意が成立していなかった場合、婚姻費用は、調停申立時からの分を支払ってもらえることになります。なお、婚姻費用の請求は、不誠実な行動をとった有責配偶者からでも行うことができます。たとえば、夫を裏切って家を飛び出した有責妻が、別居中の生活費として婚姻費用を支払ってほしいと請求するのは認められています。また、婚姻費用の額がいったん決まっても、その後、収入が大幅に減った場合には、婚姻費用が減額されることがあります。請求が認められると、婚姻費用を負担している側がリストラされるなどして収入が減少した場合は、婚姻費用の減額が認められることがあります。この点は、養育費と同じといえます。
婚姻費用の請求方法
2025/09/05
婚姻費用については、まず、夫婦で協議するのがスタートとなります。婚姻費用の分担額について話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。協議でも調停でも話がまとまらなければ、婚姻費用は決まりません。そのため、別居中の夫婦で婚姻費用の額をめぐる話し合いがまとまらず、調停も不成立になってしまうと、婚姻費用の分担額が検討されないままというケースも少なくありません。調停で合意できない場合は、財産分与や慰謝料の話し合いをしている最中でも、婚姻費用のみを請求することができます。受けて合意に至ることもありますし、調停で決まらないときには、調停委員の説明を受けつつ、調停で出された案にどうにか服する形で合意に至ることもあります。最終的に調停でも合意できない場合は、自動的に審判に移行し、審判で婚姻費用が決められることになります。
婚姻費用の算定方法
2025/09/05
では、婚姻費用の金額はどのように決まるのでしょうか。この点は、養育費の算定と同じように、裁判所が定めた「算定表」を基準にして決められるのが一般的です。もちろん、当事者同士が納得すれば、算定表よりも金額を増やしたり減らしたりできますが、一方が婚姻費用の負担を求めて調停を申し立てたり、裁判を起こしたりした場合には、基本的に「婚姻費用の算定表」にのっとって、婚姻費用の額が決まることになります。婚姻費用算定表というのは、養育費と同じく「この年収の夫婦で、夫と妻の年収をこう組み合わせた場合、この子の年齢であれば婚姻費用の額はこれくらいになります」という目安額を示すものです。夫婦それぞれの年収、子どもの人数・年齢に対応した算定表のなかから該当するマスを探せば、それが婚姻費用の額となります。具体的な金額がわかるという点で、大きな参考になります。
婚姻費用は別居中の夫婦で問題になる
2025/09/05
婚姻費用とは、夫婦が生活するために必要な費用のことで、いわゆる生活費のことです。衣食住の費用や光熱費、教育費、医療費なども含まれます。その費用は、法律上、夫婦で分担することになっています。この婚姻費用は、夫婦が同居して一緒に生活している場合は特に問題になることは少ないのですが、別居している場合、どちらか一方に問題になることが多いのです。たとえば、夫が会社で働いて、妻が専業主婦をしている家庭の場合、夫が働いて得た収入を妻に渡さなければ妻は生活ができず、妻が別居生活に入ると離婚を求める形で婚姻費用の分担を請求することになります。逆に、同居中の夫婦の場合は、わざわざ婚姻費用を請求することはありません。基本的に婚姻費用は請求する側に切実さがあります。家族を別に暮らしている場合に、婚姻費用を請求できるということです。そのため、別居中の夫婦で婚姻費用の金額をどうするかを話し合い、あらかじめ協議や調停をすることができます。婚姻費用は、子どもの生活維持費にも含まれるため、夫婦に子どもがいる場合は、夫婦で分担する義務があります。元夫は元妻を扶養する義務がなくなりますが、子どもがいる場合は赤の他人になってから離婚が成立するまでの間に、相手や子どもを扶養する義務が残ります。また、夫婦に未成年の子どもがいない場合でも、婚姻費用の請求ができます。この点は、養育費の請求とは大きく違うところです。離婚の話し合いが始まった場合には、財産分与や慰謝料の話をする前に、婚姻費用の話をすることがあります。すでに別居していて婚姻費用について話し合っていない場合でも、婚姻費用のみを請求することができます。
婚姻費用の分担
2025/09/05
離婚にまつわるお金の問題で、もう一つ知っておきたいのが「婚姻費用」の分担です。これは、夫婦が別居した場合に、離婚が成立するまでの間、経済力のある側がパートナーの生活費の一部を負担するというものです。
合意分割の手続きと注意点
2025/09/05
合意分割は、その名のとおり、夫婦が話し合って年金分割を決めるものですが、財産分与や慰謝料と違って争いが激しくなることはあまりありません。ほとんどの場合、厚生年金・共済年金の納付記録を2分の1に分割するのが通常なので、分割するかどうかで揉めることは少ないです。ただし、注意が必要なのは、あくまでも「受ける側」が相手に対して年金分割を申し入れ、年金分割の合意が行われないと分割できないという点です。ほうっておくと分割の請求ができなくなってしまう可能性があります。そうなると、せっかくの権利を失ってしまいますので、機会を逃さないように注意してください。協議離婚の場合、年金分割の合意内容は、公正証書か、公証人の認証を得た私署証書の形にする必要があります。そうしないと、年金事務所での分割請求手続ができません。ただ、年金事務所に届け出る際、離婚協議書に年金分割の合意を書き加えることも可能です。年金分割の内容を他人に見られたくないと思うなら、別に年金分割の合意書を作成するという方法も考えられます。
合意分割と3号分割
2025/09/05
実は、ここまで説明してきた年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」の2つの方式があります。合意分割とは、夫婦の合意によって、婚姻期間中の厚生年金・共済年金の年金記録を、最大2分の1まで分割する方式です。通常は、平成20年4月からスタートした制度で、離婚時に双方が合意して分割割合を決めます。一方、3号分割とは、専業主婦(夫)やパート勤務などで厚生年金の第3号被保険者だった場合に、その期間分を自動的に2分の1に分割する制度です。こちらは平成20年4月からスタートしています。なお、自動的にといっても、年金事務所への届出は必要なため、その点は注意が必要です。このように二つの方式があることは、ちょっとややこしい話に聞こえるかもしれません。実際にはどうすればいいのでしょうか。たとえば、平成元年に結婚して、平成22年に離婚する場合、平成20年4月までは「合意分割制度」により分割割合を決め、平成20年4月から離婚までの期間については「3号分割制度」により自動的に2分の1に分割されることになります。しかし、平成元年から平成20年3月までの期間については、合意分割制度により分割割合を決める必要がありますから、話し合いが必要です。最近のケースでは、平成20年4月以降の期間しか該当しない場合、すべて3号分割で処理されますので、合意分割の話し合いは不要です。いずれにせよ、離婚から1年を経過すると多くの年金分割ができなくなりますから、必ず期限内に手続きを終えるようにしましょう。
年金分割は離婚後1年以内に
2025/09/05
年金分割は、離婚後1年以内に年金事務所に行って分割請求の手続きをしなければなりません。1年が過ぎてしまうと、もう分割できなくなってしまいますので、注意する必要があります。
年金の「納付記録」を分ける制度
2025/09/05
注意が必要なのは、この制度は、将来の年金を分けるものではなく、将来の年金を分配するのではない、ということです。あくまで、将来の年金を受け取るための記録を分けるものだということです。たとえば、夫が会社員で、夫の名義で支払っていた年金保険料に加える形で、パートナーの名義で支払っていた部分が将来の年金に加算されることができるようになる、という仕組みです。なぜこのような制度を設けたかというと、夫がサラリーマンや公務員で妻が専業主婦の家庭は、夫だけの納付記録しかなく、将来の年金額に差が生じるからです。この場合、妻は年金分割制度では「三号分被保険者」として扱われます。つまり、夫がサラリーマン夫婦の場合で、妻が専業主婦だったときに、厚生年金と厚生年金の両方を納めていたとするならば、妻もより多くの年金を受け取ることができるのです。しかし、これを逆に考えてみると、この夫の納めた年金は、夫婦で一緒に築いた財産から支払ったものである以上、公平でなくてはなりません。そこで、厚生年金の納付記録は夫婦で分け合わなければならない、ということです。将来離婚のとき、夫が納めた厚生年金や共済金の記録を、妻に分けてもらえる制度が年金分割制度です。かつて、妻が専業主婦の場合は、これを考慮しても相当の年数にならず、将来の年金額にあまり影響しないことが多かったのです。逆に、結婚して1〜2年で離婚する場合には、年金分割しても短いので、将来の年金額にあまり影響は見込めません。なお、企業によっては、自主的に「企業年金」や「二階部分」を設けている場合もありますが、現在の制度では、この企業年金や二階部分は年金分割の対象になっていません。また、年金分割制度は、年金の「二階部分」に関する不公平をなくすための制度です。そのため、夫が自営業の場合は、年金の分割は発生しません。自営業の場合、夫はそもそも制度上、国民年金のみを納めており、二階部分を納めていないためです。
年金を分割するには
2025/09/05
年金分割とは、婚姻中の厚生年金、または共済金の保険料納付記録を、離婚する夫婦間で分割する制度のことを言います。なにやらむずかしい話のように思えるかもしれませんが、簡単に言うと、夫婦として生活した間に納付した年金の納付記録を二人で分けあうということです。
どのくらい払ってもらえるの?
2025/09/05
夫や妻に浮気をされた場合、「さぞ慰謝料は高く取ってやれる」と思いますよね。しかし現実には、離婚時の慰謝料は、読者のみなさんが想像するほど高額ではありません。テレビや週刊誌で報道される芸能人やスポーツ選手のケースは、財産分与も含めた金額で、これは非常に特殊です。慰謝料の金額は、双方の有責性や婚姻期間、未成年の子どもの有無、財産分与の状況など全体的な事情を考慮して決まります。一般的に浮気が原因で離婚する場合は、100万円〜300万円という範囲が多いです。相場の意味はここにあります。相場を基準として熟慮離婚など婚姻期間が長い場合や、夫が家庭の外に子どもを作ってしまった場合などは、慰謝料が高額になることがあります。逆に、妻側にも何か問題があれば減額されたり、さらに慰謝料が認められなくなる場合もあります。⸻私たちの事務所に相談に来られる方の中には、「慰謝料を1000万円くらい請求したい」とおっしゃる方もいます。しかし、実際の裁判で認められるのは、パートナーの浮気によって相当につらい思いをしたとしても1000万円を超える金額はまれです。一方、夫婦の協議や調停によって慰謝料の額を多く支払わせる場合もあります。その場合は、夫婦が別居していることや婚姻費用(生活費)を支払わなければならない場合、慰謝料の金額が多くなってしまうこともあります。また、浮気をしたことが離婚原因である場合には、裁判にならなくても相手の要求を飲むことが協議・調停・離婚に至るための条件になることもあります。